■
いつもと同じように
おにぎりとお茶を持たせて、行ってらっしゃいってお仕事に送り出されてるハズなのに 他の女と会ってちゃ、びっくりだよね。朝ごはんに食べたのはサンドイッチだって言ってたっけ。それってさ、今日のお昼ご飯に持たされる予定だったヤツだよね。
早番だから12時半過ぎにアリバイ工作の連絡を入れて 私にいつも使うスタンプ。そのごめんねのスタンプを奥様にも使うのね。
そんなもやんもやんな紅葉が綺麗だった芦ノ湖畔。
今その時間だけは、私の事だけを考えてくれれば良いのに。
お手洗いに立ったタイミングだとか、煙草を吸いに喫煙所に入ったタイミングだとか
いくらでも見えないところで送れるでしょう。
普段家族で使ってる自家用車で
まさか抱き締められるとは思わなかった。
当たり前なんだけど 私が助手席に乗って、運転するあなたの左手を握ってた事だとか 愛おしそうに手の甲にキスをしてくれた事だとか シートベルトを伸ばしてした左頬へのキスだとか 隣に奥様が座った瞬間にそんな事まるでなかった事にされてしまう事が悲しい。
だって私のものじゃないもの。セカンドでも良いって思って始めたのに。
それでも私は懲りずに2週間後、あなたに会いに行くんでしょうね。こんな黒い感情がぐるんぐるんに渦巻いた所で、私はあなたに微塵も感じさせてはいけないから。
辛いならやめればいいのに。
帰りの電車が人身事故で運転見合わせ。
ワンコールで出たら、ついさっきサヨナラをした彼に助けを求めようと思ったの。
出たよ。すぐね。
でも「今から帰るよ」って連絡を入れてしまったから 無理だって。はいはい、本妻には勝てませんよ。